【社員紹介】小説家志望からコーポレートITの頼れる存在へ。失敗から学んで成長したこと
こんにちは!採用広報のどらごんです。 今回は2020年に中途で入社したキム!にインタビューしました!ユニークなキャリアパスと、失敗を恐れずに挑戦し続ける姿勢、ぜひご覧ください。
いじめとライトノベル。小説家を目指して日本へ
ーー本日はよろしくお願いいたします!まずは自己紹介をお願いします
よろしくお願いいたします!私は現在2社のお客様でシェアード社員としてコーポレートIT全般の運用業務を担当しています。特に運用業務の効率化や、他部署と連携しながらコーポレートIT課題の対応を推進することが得意ですね。また、最近はKikzo(※)への投稿やコメントを積極的に行っていて、先日の社員総会ではナレッジ投稿数、コメント数の部門で表彰していただきました。
※Kikzo:会員企業とUGメンバーによる、コーポレートITに関するクローズドのナレッジシェアWEBサービス
ーーおめでとうございます!Kikzoの話は後ほど聞かせてください!まずはキム!という呼び名の由来から教えていただけますか?
私のパワーネーム(※)なんです(笑)。韓国人の名前は日本人にとって覚えにくいと感じられることが多いです。また私自身は呼び名においてもその人の個性をちゃんと表現することが大切だと考えています。なので、短い記憶に残るキム!という呼び方をお願いしています。インパクトも欲しいので書くときは「!」をつけています(笑)
呼び名はファーストインプレッションに影響するのでとても大切ですね。
※パワーネーム:呼ばれて元気になる名前。多くのUGメンバーが社内で使用している。
ーー重要なことですね。「ファーストインプレッションを大切にしよう」と考えたきっかけがあれば教えてください
父が牧師で引っ越しが多かったため、子どものころから大人と触れ合う機会が多く、ファーストインプレッションを良くするように教育されました。銀行に行った際も、服装や態度で相手の対応が変わることを実感し、「これは生きるうえで使える技だな」と学びました。良いイメージで覚えてもらうことが大切だと、そのときに強く感じました。
また、韓国の軍隊には「一等兵の印象が最後まで残る」という教訓があるんです。ファーストインプレッションが悪ければ、後で良いことをしても悪い評価がつきがちになるし、逆に良ければ後で失敗しても「そのときだけだろう」と思ってもらえる、ということです。軍隊に入ったときはあらためてファーストインプレッションの大切さを思い出しましたね。
ーーキム!さんのこれまでの経歴についても聞かせてください。日本に来たのはどういった経緯だったのでしょうか
日本に来た一番の理由は、小説家になりたかったからです。幼い頃から引っ越しが多かったので、転校生になることがほとんどでした。特に高校時代、都会から田舎に引っ越した際に周りと合わず、いじめを受けた経験があります。その時の唯一の心の支えが「日本文学」、特に当時読んでいた日本のライトノベル「狼と香辛料」でした。日本のライトノベルは「ひとりぼっちで傷ついた心を慰めてくれる内容が多い」と感じました。主人公が好きなことをやりつつ、周りに支えてくれる仲間がいる姿に勇気づけられました。
ーーライトノベルがキム!さんの支えになったんですね。そこからなぜ小説家を目指したのですか?
ライトノベルは慰めてはくれますが、「癒されることはない」と感じたんです。傷ができた時に最も危険な状態を慰めてはくれるけれども、完全に傷をなくすことはできない。その限界を感じ、「自らを守ることができる作品を作りたい」と考えて、小説を書こうと思いました。この経験がなければ、日本にもUGにも来ていなかったと思います。
高校2年生の時に、「愛」をテーマに日本語で小説を書いていこう、そして小説家になろうと決意しました。聖書が語る「神が人間に与える無限の愛」を参考に、親子、友情、恋人との愛などをテーマにしています。日本語は韓国語と語順が似ているため独学で習得し、好きなアニメやNHKニュースを日本語で見ながら勉強しました。
ーー高校を卒業した後はどうしたのですか?
大学では国際関係学部と心理相談学部を専攻しました。そして2013年、大学2年の時に日本語能力検定N1に合格し、軍への入隊を延期して関西学院大学に4ヶ月間留学しました。リアルな文化体験ができたし、なにより日本語を試すいい機会になりましたね。日本の大学で日本人と勉強する中で、とくに漢字の難しさを感じ、もう一段階上の勉強が必要だと気づきました。初めて日本で小説を買った時も、知らない言葉ばかりで2ページ読むのに2日かかったんです。
大学卒業後は空軍で2年間兵役につき、その後小説家を目指すことも念頭にワーキングホリデービザで2018年に沖縄のリッツカールトンで働き始めました。さまざまな国のお客様と接し、人生の多様性に触れることで視野が広がりました。1年契約だったため、ビザ更新に合わせて2019年に東京へ移住し、大手動画配信サービスのカスタマーサポートとして働き始めました。
UGを辞めようとも思った挫折、大切な気づきを得ました
ーーUGに入社したきっかけについても教えてください
カスタマーサポートの業務委託期間が終了し、28歳で次の仕事を探していました。大学の専攻がビジネスに直結するものではなかったので、家具屋やシェアオフィスの運営会社など、幅広く応募しました。しかし、「即戦力にならない」と判断されたり、新卒経験がないことから日本企業での働き方がわからないこともあり、なかなか採用に至りませんでした。さらにそんな中でコロナ禍に突入し、すべての面談がキャンセルに。そんななか初めてオファーをくれたのがUGでした。転職サイトに書いた自分の経歴から何か価値を感じてくれているのではないかと思い、希望を持って面談に行きました。
ーー実際に面談してみていかがでしたか?
面談から感じた雰囲気は他社とは違う印象でした。「シェアード社員」はとてもおもしろいビジネスだと思ったので、面談中に私が「UGで働いた経験を活かして、もし韓国に帰ることがあれば、似たような事業をやりたいです!」と話したところ、「それは難しいかもしれませんね」と、意見をもらったんです。「シェアード社員」が必要とされる日本独自の産業構造や人材市場の背景を具体的に説明してくれました。その瞬間、私の理解不足が露呈してしまった気がして「落ちた!」と思い焦りましたが、実際そうはなりませんでした。冷静に捉え直すと、私の考えに対してただ否定するだけではなくきちんと考えを説明をしてくれたとのだと理解し、誠実な社風を感じて入社を決めました。
コロナ禍に突入した時期で求人が非常に少ないなかでUGに入社できたことは、本当に助けられたと思っています。
ーーそうですよね。キム!さんが入社したのは2020年5月でした。実際に入社されてどうでしたか?
正直、「この会社大丈夫かな?」と思いました(笑)。当時のオフィスは今の半分のスペースでした。雇用契約書を提出しに行った時は、社内に3人しかいなくて不安になりましたね。最初の3ヶ月間はお客様を担当することがなく、出社しても人がいない状況で、さらに不安が募りました。周りの社員はただでさえコロナ禍に突入してイレギュラーな対応が多く発生していたのに加え、1ヶ月前の4月に入社したたくさんの中途・新卒メンバーのケアで手一杯な印象でした。
そんな時、須田さんから「UGはすぐに担当するお客様が決まらなくても大丈夫。助け合いがある会社だから、気にせずに今は辛抱強く取り組もう」と声をかけていただきました。とくに当時は毎月希望する社員向けに社長研修という形で須田さんとコミュニケーションを取る機会があり、不安な気持ちが少し和らぎました。お客様を担当しない間は、ITパスポートの勉強をしたり、お客様先の業務を見学させてもらって、UGメンバーからIT設備の説明を受けたりして学習に努めました。
ーー最初に担当したお客様での経験について教えてください
はい。最初に担当したのは人事関連サービスを提供するお客様です。そこでPCのキッティングやコーポレートIT関連のヘルプデスクを担当していましたが、スクラム(※)メンバーとのコミュニケーションがうまくいかず、報連相について指摘を受けました。当時は問題があったと思われるチャットの履歴を見ても何が問題なのか理解できませんでしたね。自分で解決しようと仕事を進めていたのですが、相談すると迷惑になるのではないかという思い込みがありました。自分では十分なコミュニケーションを取っているつもりでも、周囲からは足りないと思われていたと反省しています。
※スクラム:お客様ごとに、その企業を支援するメンバーで構成されたグループ
ーーそうだったのですね。その次に担当したお客様では改善されたのですか?
いえ、改善はしておらず、むしろそれがもっと大きな問題となってしまいました。情報提供サービスを事業とするお客様を担当し、PCのキッティングやヘルプデスクを担当していました。あるとき、お客様社員が利用しているMacbookを勝手にバージョンアップしてしまい、データが消えてしまうという失敗をしてしまいました(なんとか復元できました)。一緒に働くメンバーに事前に確認・相談をすべきでしたが、当時の私は問題ないと思い込んでいました。結果、スクラムメンバーからは「キムさんの行動が予測できないので不安です」と言われ、お客様からは「キムさんにはもう仕事を任せられません」とまで言われてしまいました。そこであらためてコーポレートITの仕事は安定性や信頼が大切なのだと痛感しました。
担当していた期間の最終日にお客様社員の方にご挨拶に回ろうとしたのですが、それも断られてしまい非常にショックでした。しかし、その中で営業部門の年配の社員の方が「キムさん、ここで出会ったのも何かの縁です。今後どこで出会うかわからないですけれど、お疲れさまでした。今度会ったら、よろしくお願いします」と声をかけてくださったんです。その言葉を聞いて初めて、「自分は全然できていなかったんだ」と気づかされましたね。
大切なことに気づくと同時に「UGを辞めた方がいい」と本気で思うほど、この仕事は向いていないのではないかと感じ、自信がなくなっていました。
ーーそのつらい経験があっても、UGを続けられたのはなぜですか?
過去にもそういう経験が多かったからです。高校時代にいじめにあったり、大学時代にも失敗を繰り返したりしました。その失敗を題材に小説を書いていたくらいなんです。逆に言えば、そうすれば失敗と向き合い、それを乗り越えられることを知っていたんです。
辞めようと考えたのは、冷静に考え直したうえで「この仕事で自分の力が発揮できないのではないか」と思ったからです。でももう少し自分の人生を考えると、必要なタイミングで良い人がついてくれる。それが力となって困難を乗り越えれば、それは自分の小説の題材にもなって、結果的に人を癒せる小説が書けるかもしれない、と考えるようになりました。
ーー実際そこからどのように成長したのでしょうか?
その次に建築業のコンサルティングを行う企業を1年ほど担当しました。ここでの仕事は私にとって大きな転機となりました。キッティング、端末管理、台帳管理、アカウント管理などが主な業務で、私が参画する時点でそれまで担当していたUGメンバーが信頼を失ってしまったため、お客様からの信頼を取り戻さなければならない状況でした。
当時一緒に担当することになったNさんには本当に助けられました。仕事をしている中で私を勇気づけてくれたり、私の業務スタイルや考え方が他の人と違うことを理解したうえで、ITのことも仕事の進め方も教えてくれました。それまで担当したお客様で一緒だったUGメンバーにもたくさんお世話になっていたのですが、失敗を重ねた後のこのタイミングでNさんと仕事をしたからこそ、その言葉に助けられることが多かったし、Nさんの業務スタイルや考え方を間近で見て参考にすることで徐々に仕事の信頼を取り戻せることが実感できました。そこで急成長できたので、今でもNさんの業務スタイルを真似して仕事をしています。Nさんがタスク管理や工数管理をうまくやりながら、感じよくコミュニケーションをとってくれたおかげで、お客様からの信頼も取り戻せました。
私自身はNさんの元で何でも取り組むように心がけていると、省力化や効率化が得意なのだということがわかりました。また、わからないことがあればUG社内の他のメンバーに聞くようにもなりました。そうやって行動していると、お客様からは「できることとできないことがはっきりわかるし、できることについては効率よく対応してくれる」と評価してもらえるようになりました。コーポレートITの専門家としてはっきり意見を述べ、行動することで、お客様は信頼してくれるんだと感じました。最初は会社として信頼を失ってしまったと感じていましたが、人同士の信頼ができると会社の信頼も回復できるんだと気づきました。
自己評価と他者評価にギャップがあるのは当然
ーー冒頭でKikzoの投稿数、コメント数で表彰されたお話がありました。あらためてKikzoに投稿を積極的にしようと思った背景を教えてください。
元々Kikzoに投稿してみたいとは思っていましたが、以前は自分の中に書ける事例がない、他のみなさん方が知識が広いから自分が下手にコメントしても役に立たないだろうと思っていました。1年前はお客様が決まらない時期もあり、心に余裕がない時期もありました。当時はKikzoに書かれた質問を読んでも、何を求められているのか、どこが勘所なのかが、分かりませんでしたね。それからいろいろなお客様先で業務を経験するなかで、「ユーザーさんが知りたい問題の解決策を”どう伝えるか”が大切だ」と気づきました。今では質問の意図やそれに答えるうえでの勘所がわかるようになり、Kikzoでも投稿しているユーザーさんの本当に答えてほしいことが読めるようになってきたと感じています。解決策をシンプルに伝える場合もあれば、説得力を増すために既存の意見に同意しつつ自分の経験を元に別の言葉で同じような答えを書くこともあります。これまでのナレッジの蓄積と、人生のあらゆる経験がつながって、このようなことができるようになったと感じます。
ーー入社後の1年と現在で周りからの評価に変化を感じますか?
実は、周りの評価がどうであっても、自分に対する影響はほとんどないんです。自己評価と他者評価にギャップがあるのは当然だと思っています。自分が自分のことを仕事ができないと感じたら落ち込みますし、逆に周りが良く評価してくれたって、自分では「まだ知らない部分があるのかも」と思ってあえてその他の意見に耳を傾けるように意識しています。もちろん、周りからの意見や評価は聞きますが、最終的には自分で評価することが大切です。だからこそ、UGに居続けられたのかもしれません。
周りの評価を気にしないのは、韓国の文化と自分の価値観の違いもあるかもしれません。韓国にいたときは、多くの韓国人が同じレールのうえを進んでいるように感じていました。軍に行って、結婚して、子供ができて、家を買って、子供を良い学校に行かせる。そしてその場面場面に周りからの評価がついてくることが多いんです。私はそれが嫌で日本に来たというのもあります。
また、UGに入社して失敗を重ね、周りからの信頼を失った時もありましたが、それよりもひどい状況を過去にも経験してきました。反省はしますが、そのまま失敗を引きずっていても仕方がない。失敗を引きずらず、自分がちゃんとやっていることを地道に示し続ければ時間が解決してくれるということを知っていました。
これはUGに入社している新卒のメンバーにも伝えたいことです。「自分のペースでいいんだよ」と話しています。
ーー今後についても教えてください。現在も「小説家になりたい」という夢を追っているのでしょうか?
「小説家になる」という夢は今もあります。 ただ、その意味合いは以前と少し変わってきたように思います。韓国から抱いてきたこの「小説家の夢」はUGで働くなかで、「いつか必ず叶えるべき目標」から「一生をかけて向き合うべき宿題」へと変化しました。かつては日本へ来るための理由だったものが、今では日本で生きていく上での原動力となっています。 無理に完成させることにこだわるのではなく、日々の暮らしの中で「これを書きたい」と感じたことを、小説として丁寧に紡いでいく。たとえ世間から小説家と認められる舞台に立てなかったとしても、ここ日本で小説を書き続けているだろう、と思っています。
ーー素敵ですね!UGでの今後の目標についても教えてください
正直なところ、今は具体的な目標がないんです。
スキルアップしたい対象を具体的に決めず、お客様が求めているものに対して真摯に仕事をし続けていけば、結果的に自然と成長できると思っています。2年前は新卒向けの教育をしてみたいと思ったこともありました。もともと学生向けに先生をしていた経験があったからです。しかしそのときは自分の状態や周りの要望、タイミングが合いませんでした。
必ずしも教育の場でなくてもいいと思います。たとえばこのインタビューのように自然に自分の経験や価値観を共有できる場があったら挑戦したいですね。それが誰かの目に留まって「じゃあキム!さんに何か頼んでみよう」となったら嬉しいです。そういったことをするには準備をして待つということが大切だと思います。釣りと同じです。一旦投げて、準備して待つ。この繰り返しかなと思うんです。
ーーこのインタビューも、まさに「投げて待った結果」だったんですね
はい、そうですね。アピールしていたわけではないけれど、たまたま今までやってきたことがどらごんさんの目に留まったということです。私の人生って、大体そういう風にできています。日本に来たことも、UGに来たことも。このインタビューも、最初は受けるかどうか迷ったんです。「自分の経験はインタビューで語るほどのものかな」と。でも、いいチャンスだし、これを読んで誰かが反応してくれたら嬉しいなと思ったんですよね。小説を書く時も、誰か一人でも読んでくれたらいいなと思ってやってきましたから。
ーーいいですね。このインタビューをこれから入社する方や、既存のUGメンバーに読んでいただきたいですね!



