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ベトナム訪問録 - ユナイトアンドグロウ株式会社

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2011.05.27

5月23日~25日の3日間、ベトナム(ハノイ)を訪問してきましたので概略を報告します。

高層ビルから見た、ハノイの街並み

高層ビルから見た、ハノイの街並み

■きっかけ
ユナイトアンドグロウ社員向けに講演会をしていただいたこともある、ヘッドウォータースの篠田社長(『生き残るSE』の著者ですね)が企画をしてくださって、15人の若手会社経営者とともにベトナム行きが実現しました。3年前にHW社が出資したオフショア開発拠点をはじめ、現地の企業や大学にアポどりをしていただき、駆け足で訪問をしてきました。

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■ベトナムの概要
ベトナムは社会主義国家ですが、中国と同様に市場経済を推進しています。最大の都市は南部のホーチミン(旧称サイゴン)で、2番目に大きいのが首都のハノイ(北部)です。
人口は8千5百万人で世界12位。2030年には日本の人口を抜くだろうと言われています。GDPは約8兆円で世界13位。これはwikiによると長野県の経済規模とほぼ同じだそうです。
GDP成長率は、2007年8.5%、2008年6.3%、2009年5.3%、2010年6.8%と安定成長が続いており、一方、インフレ率も11.8%(2010年)と高いです。これもwikiの引用。5~6年でモノの価格が(給料も?)2倍になる計算ですね。

ベトナムでは、「あらゆるものが成長」しています。
小さめの市場経済であるため、いろいろな分野のNo.1企業がこれから出そろってくるであろうと思われます。行動する人にとってはビジネスチャンスの宝庫。
現地に行くことによって、これを実感することができました。

ハノイで建築中の超高層ビルと住居棟 (完成すると、ハノイ市街のオフィスの総面積が2倍になるそうです)

ハノイで建築中の超高層ビルと住居棟
(完成すると、ハノイ市街のオフィスの総面積が2倍になるそうです)

■訪問先
以下のような企業・団体・個人宛てに訪問をしてきました。
・日本で働きベトナムに戻って起業をしたビジネスマンたち。
・日系企業の支援では最大手の会計事務所。
・ハノイ工科大学でITや日本語を教えている先生。
・ハノイ工科大学から日本に留学して学位を取った学生たち。
・学生ばかり120人でゲーム等の開発をしている会社。
・親日のベトナム人が経営するオフショアの開発会社。
・ベトナム最大のICT企業
・HW社のオフショア開発拠点(LTT社)。
・LTT社のベトナム人エンジニア20名との懇親会。
・世界最大の真珠養殖会社(日本企業の子会社)への訪問。 など。
3日間に凝縮された訪問先や交流会。篠田社長やLTT藤本社長の準備とおもてなしの心に感謝です!「二度と開催できないツアー(篠田さん談)」は本当だと思います。ありがとうございました!!

見てきたことについて、以下、ランダムに記述します。聞き取ったことのメモをベースとしているので、数字が間違っているかもしれません。その前提でお読みください。(訂正があればコメントください!)

■ベトナムでは、男性の人気職種No.1 はIT関連だそうです。“エリート中のエリート”が就く職種。日本では学歴上位層は官僚になりますが、ここでは違うようですね。一般の知的労働者(高給取り)の給料が4~5万円という状況で、20~25万円も稼ぐ人も出ているそうです。

■なぜベトナムが注目されているのでしょうか?
1)チャイナリスク。
一国に生産体制を頼ることのリスクを分散する目的もあって、人件費がまだまだ安いベトナムが格好の進出先となっています。
2)急成長マーケット。
日本で2番手/3番手の企業が、ベトナムでは圧倒的トップになっている事例も多いようです。エースコック、INAX、久光製薬などはベトナムではNo.1です。エースコックのカップラーメンは、製造の徹底的見直しによって、ベトナムでは10円で売られています。

3)日本への感情がプラス。
ベトナム人は日本人を歓迎してくれます。古くから交易や国交があり、永住した日本人も昔からいて、日本人にはつながりが深い国です。

4)平均年齢。
国民の平均年齢が27歳。中国は35歳。日本は45歳。圧倒的な差があります。この差を国際競争力として使うことができます。

■現在、IT関連でベトナムに新設される会社に対しては「優遇税制」が適用されます。「赤字なら免税、利益が出てから5年間も免税、さらにその後10年間は税率10%(通常の税率25%)」という、大変魅力的な条件です。
この条件は、かつては製造業に対して提示されていましたが、現在は無くなったとのこと。IT関連企業へのキャンペーンも、いつ終了するかわかりませんから、今がチャンスと言えます。

■日本のJICAは5年間で7億円の資金を投入して、ベトナムのIT人材を育成しているそうです。
ITSS(ITスキル標準)Level 3の技術力と日本語検定3級合格を最低目標として、毎年、成績上位の学生は慶応大学SFCおよび立命館大学へ送り込んでいます。

ハノイ工科大学にて

ハノイ工科大学にて

2006年度から開始して、毎年120名が日本へ留学。
第一陣の卒業生が2011年6月に帰国したとのこと。ベトナム帰国後は、4年間を国家公務員として働く約束がある(500万円の円借款を返すため)らしいのですが、月7万円を4年間返済し続けることができれば、民間企業への就職も不可能ではないようです。(ここだけの話)
ブリッジエンジニアとしては即戦力に近く、必ずニーズがありそうです。組み込み系の仕事がやはり多いようですが、学生たちはITインフラやWEBもやりたいとのことで、聞いてみると多くの人が手を挙げていました。

ITができて英語ができて日本語もできます。

ITができて英語ができて日本語もできます。

■NCSテクノロジーはベトナムで独立系の開発会社。JICA・NECソフト・HITACHI・インテックなどのオフショア開発を請け負っていて、エンジニア単価は日本円で16万円/人月程度とのことです。
顧客の業務分析等は行なわず、コーディングからテストまでに限定して担当します。言語は主として.netかjava。平均年齢27歳。
独自開発のE-Learningソリューションパッケージが好評で、日本企業の数百社が導入しています。

■FPTソフトウエアは、3,500人の技術者で売上5,200万ドル(45億円)。
日本企業が顧客の50%以上で、最近は米国や欧州などにも拠点をつくって売上を増やしています。
そもそもFPTグループは日本のNTTグループと似ていて、通信、携帯、ソフトウエア、システムインテグレーション、さらには不動産、証券、学校など多面的に事業を展開していて、国内最大のICT企業として従業員1万人を擁しています。

FPTソフトウエアのオフィスは日本庭園風の飾り付けが綺麗でした

FPTソフトウエアのオフィスは日本庭園風の飾り付けが綺麗でした

5年前には大学を創設し、現在の学生数は4,500名。日本語とITの両方を教えることが特長で、去年の第1期生300名は全員が就職できているとのこと。

FTPソフトウエアの開発スタッフエリア

FTPソフトウエアの開発スタッフエリア

■Hanoi University of Science & Technology社は、ほとんどのスタッフをハノイ工科大学から集めていて現在120名。学生スタッフも多いようです。
ゲームとモバイルアプリを開発していて、ベトナムではTOP3のモバイルコンテンツ会社とのことです。
売上は8,000万円/年程度。まだ小さいですが、近い将来の日本のSNSサービスのD社やG社だと考えれば、相当なポテンシャルがあります。

■HW社が出資をした開発拠点(ライフタイムテクノロジー社、藤本社長)には、20名以上の開発スタッフがいました。

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皆、事務所の中では静かにしていてベトナムらしいなと思ったのですが、本当のベトナムは違いました! 懇親会での一気飲み大会やじゃんけん大会のエネルギーには本当にスゴイ!

日本から持って行ったプレゼントでじゃんけん争奪大会。すごいエネルギー。

日本から持って行ったプレゼントでじゃんけん争奪大会。すごいエネルギー。

■最後に訪問したサイゴンパール社には圧倒されました。

ひとつひとつ、真珠の種を植え付けていきます。非常に細かい作業。

ひとつひとつ、真珠の種を植え付けていきます。非常に細かい作業。

真珠の養殖で世界一の規模。東京ドーム48個分の養殖場。日本人が、まったくのゼロから場所を確保し、人を育て、現地の環境に合った技術を磨いた結果としての世界一です。

ここに写っている遠方の海よりも広いエリアで養殖が行なわれています。

ここに写っている遠方の海よりも広いエリアで養殖が行なわれています。

サイゴンパールは日本の宝飾品トップ企業のAs-me エステールの生産子会社です。ハノイから飛行機で2時間(観光で有名なニャチャン)、車で2時間半、さらに船で20分という遠方まで移動をしての訪問でしたが、旅のクライマックスとして本当に貴重な機会をいただきました。

数字関連をメモできなかったのが残念でしたが、何に驚いたかというと、日本であれば当たり前かもしれない高品質の作業を、ベトナムの田舎の人達120名で達成している点。ここまでの道のりは本当に大変であったろうと思います。現場を見せていただいた後、しばらく声も出ませんでした。

責任者の太田さんです。極めて微妙な作業と管理の積み重ね。 ジャパン・クオリティの神髄を見た感じです。

責任者の太田さんです。極めて微妙な作業と管理の積み重ね。
ジャパン・クオリティの神髄を見た感じです。

太田さん、ありがとうございました!

太田さん、ありがとうございました!

さて、ユナイトアンドグロウとして今すぐベトナムで何か出来るのかというと、本日の結論としては、わかりません。まずは私たちなりのクオリティを東京で追求し、世界に通用するレベルの仕事ができる、しっかりした組織をつくることが先決であろうと思います。

一方で、ベトナムの人達が苦手なことは「マルチタスク」なのだそうです。

どんなに優秀な(日本でいえば東大卒レベルの)技術者であったとしても、「あれとこれとそれと、同時にやってください。管理もやってください。」と依頼をすると、「イヤです、出来ません。」と言ってくるのだそうです。超秀才の人が、ですよ。
逆に、単純な仕事の繰り返しは、秀才の人も含めて大好きなのだそうです。

シングルタスク、あるいは高度な技術的作業をする、という種類の仕事に関しては、私たち日本人はもはや新興国のコストや若さにまったく対抗できません。日本の多くのプログラマーやSEは、じわじわと仕事を失っていくことになるでしょう。英語ができない、給料は高い、年齢も高い先進国の人に、テクニカルな仕事は供給されません。

私たちが役に立つ道は、ドラッカーが何十年も前から言っているところの「マネジメント」であることは間違いありません。マネジメント力は世界のどこでも通用します。太田さんは真珠一筋30年。「総合的な管理」の仕事だけはどうしてもベトナム人に教えることができない(教えたいけれど不可能)だそうです。そして今も日本語だけで仕事をしているとのこと。私としては、この認識を新たにできたのが最大の成果だったと思っています。

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